ユビキチン - Wikipedia

ユビキチン

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ユビキチンの構造のリボン図
上図の分子表面表示

ユビキチン (ubiquitin) は76個のアミノ酸からなるタンパク質で、他のタンパク質の修飾に用いられ、タンパク質分解、DNA修復翻訳調節、シグナル伝達などさまざまな生命現象に関わる。至る所にある (ubiquitous) ことからこの名前が付いた。進化的な保存性が高く、すべての真核生物でほとんど同じアミノ酸配列をもっているが、真正細菌には存在しない。古細菌にもユビキチン様タンパクの存在が示唆されている。

標的タンパク質に対するユビキチンの付加はユビキチンシステムと呼ばれ、3つの酵素、ユビキチン活性化酵素 (E1)、ユビキチン結合酵素 (E2)、さらにユビキチン転移酵素(ユビキチンリガーゼ) (E3) によって行われる。標的タンパクのリシンの側鎖のアミノ基 (−NH2) とユビキチンのC末端がアミド結合することでひとつめのユビキチンが付加され、更にそのユビキチンの中のリシンの側鎖に更に次のユビキチンが付加する、といった具合に複数のユビキチンが次々と付加されることがわかっている。ユビキチンにはK6, K11, K29, K48, K63のリシン残基が存在するがそれぞれ役割が異なり、タンパク質の分解に関与するリシン残基はK48である。ユビキチンリガーゼは基質タンパク質のdegronと呼ばれる配列を認識して結合する。Degronの認識にはタンパク質の翻訳後修飾(リン酸化、水酸化、脱アセチル化等)が重要な役割を果たす場合があり、また、どのような修飾がユビキチン化に関与するかはそれぞれの基質によって異なる。例としてレセプターにはリン酸化が、HIF-1αには水酸化がそれぞれ選択的ユビキチン化に必要である。ポリユビキチン化されたタンパク質はプロテアソームと呼ばれる巨大な酵素複合体のプロテアーゼによって分解される(ユビキチン-プロテアソームシステム)。また、一度標的タンパク質に結合してプロテアソームに取り込まれたユビキチンは、脱ユビキチン化酵素(DUB)によって基質から除去され、再利用される。またシグナル伝達クロマチンの修飾にも用いられる。

ユビキチン化はフォールディングが異常なタンパク質(ミスフォールドタンパク質)や不要になったタンパク質を細胞から除去するためにも重要な役割を持っており、このシステムをタンパク質の品質管理と呼ぶ。新生タンパク質の約30%がミスフォールディングタンパク質であると言われており、まずはじめにこれらのタンパク質をhsp90等の分子シャペロンが修復しようと試みる。修復が不可能なほどタンパク質の構造がひどく壊れていたときには小胞体から細胞質に輸送され、分子シャペロンによって品質管理ユビキチンリガーゼとして働く C-terminus of Hsc-70-interacting protein (CHIP) などへと運ばれた後にユビキチン化を受け、分解される。これらの機構を小胞体関連分解(Endoplasmic Reticulum(ER)-associated degradation; ERAD)と呼ぶ。

近年、ユビキチン-プロテアソーム系はMHC class I分子を介した細胞内由来タンパク質のCD8陽性T細胞への提示にも関与していることが明らかとなっている。抗原提示細胞の細胞質中にある、または細胞質中に取り込まれたタンパク質(ペプチド)はユビキチン-プロテアソーム系により短いペプチド断片へと分解された後に、小胞体(ER)上のTAPを介してER内にとりこまれ、ER内のMHC class I分子と会合し、細胞表面に輸送されてT細胞エピトープとして提示される。

また、サイクリン-CDK複合体のユビキチン化は細胞周期の制御に重要な役割を果たしている。この経路を利用して作られた医薬品が抗悪性腫瘍剤ボルテゾミブであり2006年12月に日本国内で発売開始された。

なお、2004年度には「ユビキチンを介したタンパク質分解の発見」の功績により、アーロン・チカノーバーアーウィン・ローズアブラム・ハーシュコの3人がノーベル化学賞を受賞した。


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